「………」
言っていいのだろうか。
上からは特に何も言われてないけど、あまり他人に言いふらすものではないよね。
「………なんですか、それ」
「お前の苗字、聞いたことあると思って調べたけどなんも出ねぇんだよ。
おかしいだろ?」
調べたって……
プライバシーも何も無いな。
それに、調べても出てこないのは当たり前だ。
だって私はそっち側の人間。
「………なんのこと言ってるのか、ほんとにわかりません」
私はもう知らないふりをするしかなくて、少し演技をした。
「………っち」
すると金髪の人は舌打ちをした。
……諦めてくれたかな?
「じゃあ私はこれで……」
金髪の人を通り過ぎて屋上を出ようと歩き始めると、ガシッと腕を掴まれた。
……痛い。
視線を合わせると、「逃がさねぇから」と私を見ずに言った金髪の人に、寒気がした。
そして腕を離されたので、私は逃げるように屋上を後にした。