「ごめんね、こうするしかないのよ。
あなたも私も。
これが幸せ」
最後に見たあの人の顔は、とても綺麗だった。
私の、お母さん。
優しく頭を撫でて、ぎゅっと抱きしめて。
私に背を向けて歩いていく背中。
その背中は小さくて。
私はその背中を守れなかったんだ。
「おかあ、さん……………」
"行かないで"
その言葉も言えずに、私はただ泣きじゃくるだけだった。
「陽葵ちゃん、今日からここがあなたのお家よ。」
「………」
悲しいとか、寂しいとか、そんなものもういらない。
疲れてしまうだけだ。
捨てよう、全部。
一人でいた方が無駄な感情持たなくて済む。