「だから、ありがとう。陽葵」
凪はそう話し終えて私の顔を見た。
「私は何もしてないよ」
そう、私は何もしていない。
それは凪の見方が変わっただけであって。
そのきっかけが日常に異物が入ったというだけで。
私じゃなくても、他の誰か、何かきっかけがあったら凪は気づけていたよ。
「いや。陽葵のおかげ。」
それでもなお、そう言い切る凪。
「ま、どっちでもいいよ。
凪がそれで幸せになってるなら」
私が言うと嬉しそうに笑う凪。
「ほら、弟待ってるよ。
帰ろう」
そして私が立ち上がると、凪も立ち上がった。
「家まで送る」
「いいよ」
「送る」
「…わかった」
凪は嬉しそうに私の手をとると、マンションの近くまで送ってくれた。
みんな、いろんな思いをもって陽炎へいる。
私なんかがいていいのかな?
部屋からの夜景は、とても綺麗だった。