「………お前軽いからもっと食え。」
昴は私を大きなソファに優しく降ろしながら言う。
「割と食べてるよ」
朝からがっつり。
本家にいる時はね。
「はい、カバン」
「……ありがと」
凪からカバンを受け取ると、みんな定位置があるのか当たり前のように座った。
でもなぜか昴は立ちっぱなし。
あ……もしかして、私が今座っている場所が昴の場所?
「ごめん…」
私は慌てて立ち上がる。
「……別にいい」
昴はそう言って壁に寄りかかった。
なので私も素直に椅子に座らしてもらう事にした。
「さて。本題に入ろうか」
その様子を見終わえた佑が口を開く。
「………本題もなにも、私は……」
「まだ、なんもしてねぇ」
私の言葉を遮って言う昴。
「え?」
「まだ、裏切ってもないのに最初から決めつけるな」
しっかりと私を見て離さない目。
「ごめん…昴から聞いた。
陽葵ちゃん、俺らにもチャンスを頂戴よ」
「………」
「俺らだって馬鹿じゃない。
関わりたくないと言われてはいそうですかって引き下がるほどの気持ちで陽葵ちゃんに関わってないよ」
佑が、いつも貼り付けている笑顔は今はない。
「それに、陽葵のこと裏切らない自信しかない」
凪は得意げにそう言って口角をあげた。
「………逃げるな」
陸の言葉は、いつもストレートで刺さるな。
"逃げるな"
……確かに私は逃げていたのかもしれないな。
いや、逃げていたよ。
「………ほんと、馬鹿」
私は俯いた。
膝の上に置いておいた手の上に水滴が落ちる。
ナニコレ。
「私知らないからね」
無責任かもしれない。それでもいい。
「まかせて」
「覚悟してて」
「決まり」
「………ったく、世話かけやがって」
佑に凪、陸に昴。
みんなの声音は明るくて。
「ばーか」
顔を上げてみると、みんなの笑顔があった。
「も~泣かないの!」
佑がそう言って私の頬を伝う涙を拭ってくれる。
「泣いてない」
「はいはい」
もう少しだけ、幸せになりたかった。
欲張り?
でも、少しだけ贅沢させて。
せっかくここまできた日常。
これが崩れませんように。
強く、願った。


