階段を降りてホームへと出ると、背の高い敏生はすぐに視界に入ってきた。
そして、敏生の隣には篠田さん。どうやら彼女も、同じ路線を使って通勤しているようだ。もしかして今まで何度も、敏生と一緒に帰っているのかもしれない。

結乃は思わず、敏生に見つからないように人影に身を隠した。いくら知り合いだからといえ、あの二人の間に割って入れる勇気はなく、電車が到着しても別の車両に乗り込んだ。


電車に揺られながら、先ほどの二人の様子を思い浮かべては、悶々と考えてしまう。二人は男女の会話を楽しんでいる風ではなく、真剣な顔つきで議論をしているみたいだった。こんなところでも、仕事の話をしているのだろうか。


――篠田さんみたいな女性とも対等に仕事ができる芹沢くんに、私はどんな風に思われているんだろう……?


敏生の気持ちは、敏生に聞かなければ分からない。考えてもしょうがないことなのに、結乃はやっぱり考えてしまう。

結乃の思考が深みにはまり始めた頃、電車は三つ目の駅に着いた。乗降客が行き交うホームをぼんやりと眺めていると、その中でも一際早足で颯爽と歩く篠田さんの姿を見つけた。