-陽斗side-



『ヒロくん!』




彼女が呼ぶ俺の名前




いつもキラキラした笑顔で呼ぶ




だけど、さっきの理事長室では





笑顔じゃなく苦しそうな顔をして





急に俺に抱きついてきた





そして、今も残っている彼女の香り





甘くて爽やかな彼女らしい香り





さっきまでこの、腕の中にいたのに






もう今すぐにでも会いに行きたいと思う自分に笑ってしまう




彼女を守る





そう、幼い頃に決めたんだ





あの、雨の日の事





桜は忘れている





だけど、俺はあの日




何が起きても桜だけは守ると決めたんだ




桜の笑顔は消さない




感情を消さないと