＊*＊*＊*＊



静かな図書室で思い返していたのはつい最近の事。




まず、始業式の日に体育館に落ちていた学生証を拾った所から始まる。


昼休みにうるさい女子から逃れるために入った体育館。思いの外暖かくて眠っていると誰かに声を掛けられた…多分。


反応が面倒くさくて寝たふりで通す事にした。



「恐れ多い……」


耳を疑った。いつもの女子とは違う鈴のような綺麗で弱々しい声。ちら、と目を開けると、子犬のようなやつだった。ほんとに。顔が犬に似てるってわけじゃないけど可愛い感じ。愛でたくなる感じ？



今までの女子とは違う……うるさくないし。


起きた俺に気付かない彼女は後ろを向いて帰ろうとしていたから思わず腕を引いて後ろから抱きしめた。