「微妙に元気ないし口数も少ないけど、やっぱりさとみんがアメリカ行っちゃうのは寂しいか」

 食後、二人で並んで皿洗いをしていると苦笑いしながらまっちゃんが言った。
 バレてる。

「……さとみんが彼に結婚願望なくて悩んでたのも、でも彼の事が好きで別れられなかったのも知ってるし。超嬉しいよ?私さとみんの家族並みに花嫁姿見たくてたまらなかったんだから」

「うん、それは知ってる。けど寂しいのも事実だろ」

「……」

「アメリカ行ったら連絡はともかく、今までみたいに会社帰りに飲みに行ったり、週末に遊びに行ったりなんて出来なくなる。……まあ国際結婚じゃないから永住する訳じゃないし、年に何度かは帰国するだろうけど」

 想像しただけで落ち込むからなるべく考えないようにしたかったのに、まっちゃんの言葉が容赦なく現実を突きつける。
 このどろどろのシチューの出来がそのまま私の心情を表していると言っても過言ではない。そして何を考えていて料理を失敗したのかなんて、きっとまっちゃんにはお見通しなんだろう。

「まっちゃんの意地悪」

 ジワッと視界が歪んで手に持っていたスポンジと皿の輪郭が滲む。

「……千晶?」