「うわあ、ごめん!」

「まあ別に食べられない訳じゃないだろうし、これはこれで美味いかもよ。とりあえずただいま」

「……お帰り」

「今日、昼間にさとみんと会って来たんだろ。どうだった?」

 流しで手を洗いながらまっちゃんが訊ねてくる。
 休みは色々忙しくて中々時間が取れないという事で、今日は昼休みの時間に合わせて営業職のさとみんが会社の近くまで来てくれて、ようやく直接おめでとうと言う事が出来た。時間が限られているので慌ただしかったけれど、こればっかりは仕方がない。

「めっちゃ幸せそうだったよー、本当に良かったよね。アメリカ行く前にこっちで式と簡単な披露宴やるって」

「おお、とうとう噂の彼氏見れるのか。話だけは聞いてたけど実物見た事なかったからなあ。にしてもやっぱりかなり忙しそうだな。行く前に皆で祝うの兼ねてどっか旅行とか行ってもいいかと思ったけど準備とかあるだろうし難しいか……普通に飲み会やるのが精一杯かな」

 まっちゃんの言葉が何気なく私の痛いところをさらに突いてくる。
 さとみん本人が式はもちろん引っ越しの準備もあるだろうし、皆の都合をすり合わせたり行き先を検討したりしなければならない事を考えたら遠出は難しいのは明白だ。
 私だって結婚が決まってから式まであっという間だった。大した事はしていなかった私ですらそうなんだから、披露宴と渡米の準備までしなければならないさとみんなら尚更だ。

 私の頭をポンと叩いてから、とりあえず着替えてくると言ってまっちゃんはキッチンを出て行った。