手を伸ばしてきたまっちゃんが私の後頭部をポンポンと叩いた。冷えた髪から伝わる掌の体温が温かい。
 例え口約束でもそう言ってくれるまっちゃんの優しさが嬉しかった。
 でも愚痴も聞いてくれて甘やかして慰めてくれるこの居心地の良さが私の友人達への依存心を助長している一因でもある。

「そーんな事言って、まっちゃんも彼女出来たり結婚したら付き合い悪くなるくせに。前に先輩と付き合ってた時、私がどうこうで揉めてたじゃん。嫌ですよ喧嘩の原因になるのは」

 潔白だとは言え微妙に居心地悪い気分だったのは確かなので、次にまっちゃんに恋人が出来た時に梶尾先輩の二の舞いになるのだけは避けたい。まああれはお互い知った人間だったせいもあるだろうから、全く知らない女の子から恨みを買う事はないか。

「……もう大丈夫だって。次はそんな事ないから」

 少しだけ考える素振りを見せたまっちゃんはやけにきっぱりと言い切った。
 仕事が忙しくて候補もいないし出会いすらないと言ってたはずなのに。

「彼女出来る前に断言されてもね……」

 凄いやきもち焼きと付き合ったらどうすんの、と続けようとした所で背後からガヤガヤと声が聞こえた。屋内で休憩していた組が出てきたらしい。

「なんだ、しまっちとまっちゃん寒いのに外にいたのかよ。遅くなるしそろそろ出るぞー」

 先頭で歩いてきたよっしーが車の鍵を人差し指でクルクルと回しながら言う。

「帰りにサービスエリアで夕飯食べてこう。そこで帰宅方向別に乗り換えて最終解散な」

「了解」