「……しま、前にも友達優先し過ぎって言ってフラれてなかったっけ」

「あー、あったねそんな事。よく覚えてるなあ」

 その時付き合っていた恋人がかなりの出不精でいつもデートの予定がギリギリまで立たず、結局家でレンタルしてきたDVDで映画見てダラダライチャイチャするのがパターン化していた事がある。部屋に引きこもってばかりな事に私は飽きていて、おまけに料理下手だと自己申告していたにも関わらず手料理をやたらと期待されるのもストレスだった。だからこんな風に友人との遊びの計画が立つと先着優先で喜んで出かけていて、皆に彼氏放っておいて大丈夫なのかと心配されていたら、案の定浮気されてフラれた。でもあの時も困った事に解放感の方が強くて、正直全く辛くなかったのを覚えている。

「……お前、俺らの事好き過ぎ」

「そうだね、愛してるよ」

 仕方ないなあという様な顔をして笑うまっちゃんに即答で返す。

 残業が少なく土日祝日に確実に休める温い職場は、将来が描けなくても友人達と遊ぶ事を最優先にするのには丁度良かった。
 変わらない物なんてない。自分で口にした通り、皆が歳を取り環境が変わればいつかはこうして学生の様に集まって遊びに行く事も難しくなる。
 頭ではずっとこのままではいられないと重々分かってはいても、諦め悪くしがみついて足掻こうとしている私は、アラサーになっても大人になりきれない、学生気分から卒業し切れていない子供でしかない。そのくせ仕方ないと言いつつも一人で取り残されるのは嫌で、優先順位も上げられないのに恋人をキープしようとするずるい女だ。

「よしよし、歳取っても環境が変わってもつるんで遊びに行こうな、しま」