「ほら今日って実際結婚した矢田丸は奥さんとデートだから来てないし、みっこも乳幼児いるから来れなかったでしょ。ゆうちゃんは今回旦那さんが出張中で暇だから来れたけど久しぶりだし、まっちゃんだって最近仕事忙しくて参加出来ない時結構あるじゃん。こうやって少しずつ揃わなくなるんだよね」
「まあ、それはそうだろうな」
「私はさー、皆といる時がこうやって友達と馬鹿やってるのが一番楽しいけど、十年後も同じ様には出来ないって分かってるんだ。結婚したり子供出来たりしたらやっぱり家庭が最優先なのは当然だから仕方ないけど、こうして集まれなくなって皆にも会えなくなるのかなあと思ったら想像しただけで寂しい。だから今は恋愛よりもこういう時間を大切にしたいって思っちゃうのかなー。本当は結婚しても子供が出来ても家族ぐるみで皆でどっか行ったり出来たらいいんだけど、それも中々難しいよね」
皆で何かをしようという時、どこかへ行こうと計画を立てる時。言い出しっぺは私とさとみんになる事が多かった。私達の雑談の中のあれしたいこれしたいという戯言を、会長だったよっしーと副会長だったまっちゃんに話して計画を詰め、皆に周知して参加を募る。もちろん他の面子から話が上がってくる事もあるけれど、私かさとみんが何もしないと今よりずっと集まりは悪いはずだ。
自分が手を離せばあっけなくなくなってしまう形のない物。少しだけ恋に似た、けれど恋じゃない物。それを失う事を私は心の何処かでずっと怖がっている。
「だからそこから目を逸らしたくて、いざという時に一人になりたくなくて、自分もとりあえず恋人作ろうとしちゃうのかな……」
さとみんにすらまだ吐露した事のない本音。まあ察しの良い彼女の事だからある程度気づいているかもしれないけれど。聞き上手なまっちゃんの前ではこういう弱音でも自然と口に出来てしまう。
ため息が吹き付けてきた冷たい風に紛れて消えた。
温泉で温まった体温も徐々に冷えてきたけれど、今更もう一度屋内に入る気にはならなかった。もうすぐ皆も出て来るだろう。


