「ん?」

「いや、まあ……ところで何でお前そんな格好してんの。コスプレ?」

 私の格好を改めて頭から爪先まで一瞥したまっちゃんが照れ隠しの様に言う。

「これは……一応他の先生とかにもし遭遇しちゃった時の事を考えてそれなりの格好をと……」

「……心遣いはありがたいけど、ぶっちゃけ似合ってないな」

 う。
 まっちゃんの言葉には遠慮がない。でもまあ自分でも正直そう思う。
 背が低くて童顔の私がコンサバ過ぎる格好をすると、子供が頑張って背伸びをしている感が強くなる。スーツを着ていたら今でも『就活生っぽい』という評価を受けるくらいだ。
 正直な所、家の全身鏡で確認した時も見慣れないせいもあって違和感の方が強かった。でもコスプレは酷くない?
 言い返そうと口を開きかけた時、まっちゃんの背後からハイトーンの声がした。

「まっちゃーん、それ誰?こんな所で逢引きー?」

 それと同時にピョコピョコと三人の制服姿の女の子が顔を出す。
 ヤバい、生徒に気づかれたっぽい。
 気づけば、校内の生徒が通りすがりにちらほらとこちらに視線を送ってきていた。まあ教師がこんな所で学外の人間と喋ってたら目立つだろうから仕方ないのかもしれない。
 それにしてもやっぱり生徒にもまっちゃんて呼ばれてるのか。

「うちの奥さん。忘れ物届けてもらったんだよ」