「うわ、もうこんな時間……!」

 時計を確認したまっちゃんが一際焦った様な声を出す。

「今日はもっと早く起きるつもりだったのに」

 多分昨夜、アラームを早めに設定し直す前に寝ちゃったんだろうなあ。まあこればっかりは仕方ないよね。それでもまだ朝の六時過ぎだ。
 まっちゃん本気で働き過ぎだと思うんだけど。こんな生活続けてたら本気で身体壊すってば。
 そう思ったけれど口を挟む暇はなかった。

「悪い、千晶。ゆっくり話したかったけど、もう出なきゃ。朝、生徒と進路指導の約束してるんだ」

「え?それはいいけど……」

 着替えた途端に洗面所に駆け込んで洗顔と歯磨きを済ませたまっちゃんは、結局今朝のあの状況の話どころか朝食も食べず、さらには寝癖を直す暇すらないままに今日も家を飛び出して行った。
 それをパジャマのまま見送って玄関に残された私はため息をつきながら、昨夜抜け出した形のままの自分のベッドに戻る。
 うちの会社は創立記念日だとかで、毎年この日は休みになる。ある程度の役職がついていると本社近くのホテルでのパーティーへの出席義務があるらしいけれど、地方営業所の平社員である私には関係のない話だ。残念な事に今年は週のど真ん中の平日だったので何の予定も入れられなかった。それでも今日は二度寝が許されるのはありがたい。結局寝落ちてはいたけれど、中々寝付けなくて寝不足である事には変わりないし。
 色々思い出すとまた眠れなくなりそうだったので、私はなるべく頭を真っ白にしようと務めながら布団の中で目を閉じた。


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