「よしよし。じゃあ逃げんなよ、おやすみ」

 額に軽く唇が触れる。そのまままっちゃんは私の身体に手を伸ばすとグッと引き寄せた。
 わずかに開いていた距離がもっと近くなって完全に密着する。その代わり、視界からまっちゃんの顔が消えて私は彼の肩に顔を寄せる体勢になった。視線が合う状態から解放されたせいか、少しだけ緊張が解ける。
 人肌のぬくもり。慣れ親しんだ香り。涙を始め、みっともない部分も散々見せてきた、心を許せる相手への安心感。

「うん。……おやすみ」

 返事をして目を閉じる。
 多分今夜、世界で一番この腕の中が心地良い。