どういう顔をしたらいいのか分からなくて返事が出来ないでいると、まっちゃんはさっさと私のベッドから枕を取ってきて自分のそれの横に並べ、私ごと横になって布団の中に入る。
 ち、近い。
 睫毛の本数すら数えられそうな距離にまっちゃんの顔がある。
 前の時はまっちゃんにほぼ意識がなかったから、顔の距離が近くてもそこまで
照れを感じずに済んだ。観察する余裕まであった。でもお互い意識があって、目も開いてて、シングルベッドのこの狭さは物凄く恥ずかしい。
 甘い雰囲気に酔うよりも恥ずかしさいたたまれなさの方が先行してしまうのは、やっぱり相手が長年知ってるまっちゃんだからなんだろうか。
 目を逸らしたい。なのに逸らせない。

「この間は自分でも無意識だったし完全に寝惚けてたけど、今度はちゃんと起きて分かっててやってるから」

 あの時と同様に、同じ洗剤と柔軟剤、同じシャンプーとトリートメントを使っていても、自分のベッドとはどこか異なる香りがする。けれどそれが不快な訳じゃなくて、いつの間にか安心する香りになってしまっている事に今更気づく。厳密に言うと、今夜はそこに湿布の匂いが混じっているけれど。

「ほーら、だから何もしないって言ってるだろ」

 身体の硬直が伝わってるのか、まっちゃんは笑いながら私の背中をポンポンと叩く。
 いや別に警戒してるわけじゃなくて、距離の近さに照れてるだけなんですけども。

「悪いけど離す気はないから、観念してこのまま寝なさい。あ、でも傷口殴ったり蹴ったりすんのは勘弁な」

「そこまで寝相悪くないよ!……多分」