「適当。行き先決めずにドライブって事で。あ、着替え用意しとけよ、温泉見つけたら入って帰るから」

 早朝に誰かに電話で叩き起こされてからの目的のないドライブ。途中で標識や立て看板を見て適当に決めた観光スポットに立ち寄ってみたり、偶然出会った温泉にはいってみたり。
 この感じ、知ってる。
 二十代の頃、まっちゃんやさとみんやよっしーやタザキチやとにかく皆と休日にこうやってよく遊んでいた。ただいつからか急な招集だと人が集まらなくなって、だから年末の温泉の時は事前にちゃんと計画を立てて告知した。でも本当はこんな風に予定外で予想外の先の分からないドライブの方が、ずっとワクワクした。コンビニで地図を調べるとか、偶然見つけたお店に立ち寄るとか、行き当たりばったり加減が楽しかった。いつも私を拾いに来るのはまっちゃんの役目で、迎えの時間の連絡を受けてから大急ぎで支度を済ませていたっけ。
 なんとなく、懐かしい。

「朝飯はコンビニでパンとコーヒーでも買って車で食べよう。ほら急げって」

 まっちゃんが笑いながら私を急かす。

「まだ動けないくらい寝ぼけてるなら着替え手伝ってやろうか?」

「結構ですー!準備くらいすぐ出来るから向こうで待ってて!」

 さっき投げつけた枕を再度抱えて殴ろうとする私を交わしながら、「リビングにいるから」と言ってまっちゃんがひらひら手を振りながら寝室を出て行く。
 多分普段忙しい分常時疲れは溜まっているだろうし、ゆっくりしたい気持ちもあるんじゃないかと思う。でもきっと、まっちゃんがこんな事を言い出したのはこの間さとみんの件でグズグズと落ち込んでいた私のためだ。その心遣いが嬉しかった。