「少なくとも、俺は一生そばにいるから。これから先もずっと遊びにだって行くし、酒だって一緒に飲めるぞ。だからそんなにビビらなくてもいいし、泣きたいだけ泣いたら笑え」

 少しだけ身体を離して、正面から目が合う。

「お前が笑ってると、こっちは安心するんだよ」

 じわじわとまっちゃんの言葉が身体中に沁みていく。その温かさが、氷の棘の様に心の奥に刺さって抜けない私の『不安』を溶かし始めてる。
 昔からずっとまっちゃんには迷惑をかけまくりで頼りっぱなしで。まっちゃんが笑っていると安心するのは私の方なのに。

 この人と結婚して良かった。
 今までが不満だった訳じゃない。でも心底そう思ったのは初めてかもしれない。

「……そこは笑ってる方が可愛いよって言おうよ」

 照れ隠しにそんな言葉が口をついて出た。まっちゃんの様にストレートに自分の気持ちを伝えるのは中々に難しい。

「いやー、どうかなあ。俺としてはギャーギャー騒いでる千晶が一番らしくていい気もするんだけど」

 ニヤリと唇の端を上げたまっちゃんの右手が伸びて来て、私の鼻を摘んだ。
 不意打ち過ぎて、正直私はかなり間抜けな顔をしてしまったと思う。

「……ちょっと!」

 目尻にたまっていた涙がその行為で引っ込んだ。私が頬を膨らませ逃れようと暴れる様を見て、まっちゃんが目を細めて笑う。
 仕返しに同じ事をしてやろうと目一杯手を伸ばしたけれど、身長差のせいもあって難なく交わされてしまった。