林檎の木の下で両想いになったカ
ップルはずっと結ばれるんだって~!
 
うちの学校には、そんな変な言い伝えがあるらしい。

5回目の時に俺は、その事にはじめて気づいた。

両想いになれなきゃ意味ねーだろ…。って、思うけど女子達はどうやら違うらしい。

いつのまにか、林檎の木の下で告白するとうまくいくっていう、内容に擦れ変わっているようだ。

「…三嶋くん!」

ぼやっとしていたらどうやら木の前を通りすぎてたらしい。

袖口を引っ張られて、動きにくい。

「…ああ。悪い。」

そう言って、向き直る。

「…あのっ、これ…三嶋くんに渡したくて…」

その子は小さな箱を差し出す。

「なに?これ。」

俺は、受け取らずに聞き返す。

「…チョコレート。好きって聞いたから!」

無言で小さな箱を見つめる。

「…ごめん、」
「…好きっ!」

二人の話し出すタイミングは絶妙で、だけど内容はあまりにも対照的だった。

「…俺、お前とは付き合えない。」

目の前の小さな女の子は俯いているけど、その目が潤んでいるのがわかった。

さっきのきらきらとした潤みとは違う、明らかに沈んでいた。

「…なんで??他に好きな人でもいるの?」

今にも崩れてしまいそうな声で呟く。

「…いないよ。」

「じゃあ、なんで?なんで?ダメなの?」

顔をあげた瞬間、真っ赤な頬に雫が落ちた。

「ごめん。今はそういうの考えられないから。」