そんな絢香の気持ちとは逆に、木の向こうから声が聞こえてきた。

「ねぇ、晃…。いいでしょ?」
絢香は、とっさに身を屈めて、そっちを見た。
晃とマリカだった。
マリカは晃の首に腕を回し、見つめていた。
絢香の方からは、晃の顔は見えなかった。


「晃…」
と呼ぶとマリカは晃にキスをした。
絢香は、驚き、足をずらした時に音を立ててしまった。
その、音に振り向いた晃と目があった。

絢香は、無意識に走っていた。

「待て!」
と腕をつかまれた。しかし、絢香は思いっきり振り払った。
「何よ!離して!」
そういうと、また走り出した。
追いかけてくる晃に、
「なんで追いかけるのよ!早く戻って続きしなさいよ!!もう、あたしに構わないで。どうでもいい女に気まぐれで構わないで!」
絢香は悲鳴のように、叫んだ。

(ー もう、めちゃくちゃだ…。)

部屋に戻ると、ただ泣いた。