16時半になろうとしていた。

絢香は、シャワーを浴びて、一応持ってきた、シンプルな黒のドレスに着替えた。

(ー 持ってきてよかった…。絶対、ドレスコードあるとは思ったけど、ここまでのホテルとは…。きっと派手に着飾った人達がいっぱいだろうな…。なんで行かなきゃ…でも、講師という立場上、華美なのもどうか…。)



独り言のように、ブツブツいいながら、髪の毛は少し巻き、化粧をした。
用意が出来ると、時間まで、窓際に座り外をみていた。
少し日の落ちてきた、庭はライトアップされ、幻想的な雰囲気に包まれていた。

呼鈴がなった。
絢香は、ドアを開けると、正装した、晃がいた。
「行こうか?」
「はい。でも、あたしなんかが行っていいんですか?」
絢香は不安そうに聞いた。
「気楽に夕ご飯食べると思えばいいよ。沢山人もいるし。」

「わかりました。」
それだけ、言うと絢香は晃の後ろについて行った。

「晃、ここ!」
会場の前に湊がいた。

「悪い、待たせた。」
「桝谷先生もお疲れ様でした。」
「いえ、こちらこそ、こんな素敵なホテルに来れて…ありがとうございます。」
絢香はフワッと笑った。

「なんか、雰囲気が全然違いますね。お綺麗です。」
絢香は、社交辞令とはわかっていても、イケメン社長にそんなことを言われ、嬉しかった。
少し頬を染め、俯き、お礼を言った絢香に、晃は苛立った。

確かに、シンプルなドレスだったが、元がいいだけに絢香は美しく、目立っていた。

晃は、
「先に行くぞ。」
と、会場に入って行ってしまった。
そんな晃をみて、湊は、
「ごめんね、なんか。」
とため息をついた。

「いえ…大丈夫です。」
と悲しそうに笑った絢香を見て、
(ー 晃、なにやってるんだよ。)
湊は、もう一度大きなため息をついた。