部屋の内線がなった。
「はい。」
「水澤です。リハ15時からなんだけど、それまで、最終確認したいから、俺の部屋これる?」
抑揚のない声に、奈々はまた、不安を覚えた。

「わかりました。」

絢香は、大きく息を吐くと、隣の部屋に向かった。


呼鈴をおすと、しばらくしてドアがあいた。
「入って。」
表情のない、綺麗すぎる顔は、迫力を増していた。

絢香の部屋とほぼ同じ造りのようだったが、奥にもう一部屋あるようだった。
その、頑丈な扉を開けると、大きな窓からは、やはり湖と緑が見え、ソファが1つとグランドピアノが置かれていた。
「素敵…。」
絢香は、無意識にピアノに触れ、幻想的な窓の外を見た。

「先生、一曲ひいてもいいですよ。」
その声に絢香は、我に帰り、
「ごめんなさい。つい。水澤さん、どうぞ。」
と、言うと、ソファに座った。