静かに車がとまり、
「お疲れ様でした。」
その声で、絢香はついたことがわかった。

ホテルのエントランスにつけられた車の外には、ベルマンが2人待機しており、笑顔でお出迎えされた。

絢香はドアを開けてもらい、降りた。
(ー なに、このホテル…。)
周りは、緑に囲まれ、広大なホテルの前には、湖がある。
(ー なんて、綺麗なんだろう。東京の喧騒が嘘のようだ。)


「先生?」
と声をかけられ、ハッとし、絢香は晃の後を追った。
シックで落ち着いた広いロビーに行くと、
男の人が声をかけてきた。
「晃、こっち。」
「お疲れ。」
晃も笑って答えた。

その男性は、
「初めまして。樋口湊です。この度はわざわざお越し頂いて、申し訳ありません。」
と、絢香に名刺を渡した。
(ー代表取締役社長、この人が、水澤さんの上司。)
「初めまして、桝谷絢香です。よろしくお願いします。」
と絢香は微笑んだ。

「晃、チェックインも他の手続きも、松宮が終わらせてあるから。コレお前の鍵。一応、ピアノも入れてもらっといた。」
「ああ。ありがとう。」