先生におんぶで家まで送ってくれてから数週間後
あのドキドキ、あの景色を
あたしは忘れてなんかいなかった
けど
「アイ……」
あたしはアイにどれだけ電話をしただろう
あの日、藤原くんが榊原さんと帰っているのを見てから
アイは学校に来ていない
「やっぱり、何かあったんだ……」
大事な友達が苦しんでいる時に、何も出来ない自分がイヤになる
「メール……見ないかなぁ……」
アイが今どうしてるのか、あたしは全くわからずにいた
「メール見てくれるよね……?」
あたしは見てくれるかわからないメールを送ってみることにした
******
To : アイ
アイ、元気?
もうすぐ体育祭だよ!
一緒に学校行こ!
みんな待ってるよ、もちろんあたしもね!
From : 鈴葉
******
ピロリローン
メールを送ったけど……返信はないだろうな……
半分諦めつつも、半分だけ期待していた
「アイ……お願い、返事して……?」
アイに伝えなきゃいけないのに
怖くて言えない
「伝える」ことがこんなにも難しいなんて
全然思ってなかった
「待っても仕方ないよね……」
あたしはケータイをギュッと握りしめ、そのまま眠った
