“ごめん”
その言葉はなんだか
冷たく突き放しているかのようで
純粋に
“ありがとう”
そう感謝の気持ちを伝えたかった。
それだけなのに………
『浩太…?』
何かおかしかったのだろうか。
鳳浩太は時間が止まったかのように
ピクリともしなくなってしまった。
一体どうしたというのだろう。
ありがとう
その言葉が嘘ぽかったのだろうか。
それとも
笑顔がぎこちなかっただろうか。
いつもニコニコしている彼とは違って
私は基本的に仏頂面かもしれない。
『ねぇ…浩太…?』
それでも何とか言ってくれないと
こちらだって困ってしまう。
いつも一方的に話してくるのは
彼からなのだから。
『いやぁー、本当助かったよ!
ケガしたら笑えないし。
その上、教科書まで拾ってもらっちゃって……』
アハハっとぎこちなく笑いながら
何とか話を模索する。
『今日に限って…
たくさん教科書積めてたんだよねー。
明日テストがあって…さ、
特に現国がヤバくて……』
そんな話、鳳浩太にとって
どうでもいい事くらい分かっている。
今はただ、その場しのぎの話をして
誤魔化したいのだ。
けれど
『せんぱ………』
その場しのぎの話だったつもりが……
『あっ!』
鳳浩太の声をかきけす程に
大切で面倒くさい事を思い出す
きっかけとなってしまった。

