「引かない?」
「引かないよ」
「声かけてもらった時から、マサのこと気になってた」
「どこがよかったの?」
「ナンパ目的とかじゃなく、純粋に私の心配してくれてたから。あと、ショートケーキくれたとこ」
アオイは冗談めかしてそんなことを言った。
「好きなの? ああいうの」
「イチゴのショートケーキとミルクティーの組み合わせが最高に好きなの。初対面なのに、マサとは前から知り合いだったんじゃないかって思った」
買うはずのなかったものだけど、あれは無意識のうちにアオイさん用に買ったもの。
「俺も人のこと言えないけど、アオイも今以上になること期待して食事に誘ったんじゃない?」
「そんなこと……」
はっきりウンと言わない唇にキスを落とした。柔らかくて甘い。全身がとろけるような心地になった。軽くすませておくはずだったのに、一度、二度と重なるたび触れ方が深くなる。好きな人とのキスはこんなに気持ちがよかったんだ。こんな感覚、知らなかった。
「俺だけのアオイになってよ」
「分かった。今夜、旦那と別れる」
アオイの瞳は俺だけを映していた。
《完》


