相手選手が高くボールを蹴り上げ試合が始まった。

選手が体をぶつける。

この正面衝突は何度見ても慣れず、少し目を背けてしまう。

体がぶつかり合うたびにバチッという音が聞こえてくるのがわかった。

試合が始まって数分間は一進一退の攻防だったが、徐々に相手が攻める時間が多くなって、防戦一方になってしまった。

なんとか攻撃をしのいでいたが、前半なかばに、立て続けにポンポンと2本トライを取られ、その後のキックも決められて、0対14とリードを許してしまっていた。

まだ前半途中。まだ2本だけ。観客達はまだ諦めていない。

前半が残り5分をきった時。

人の密集地帯から相手の大柄な8番が影山君に向かって突進した!

ぼごっ!!

大きな音共に影山君は3メートルくらい吹き飛ばされ、その場にうずくまってしまった。

ボールはというと、そのまま相手の8番がトライを決めた。

あぁ。影山君。

私は影山君が怪我してないか心配になった。

圭子ちゃんもあかりちゃんも観客席全員が固唾を飲んでその場を見つめる。

救急箱を持った人が走って影山君に向かって行った。

2、3分くらいの時間だったが、私にはとてつもなく長く感じた。

影山君はなんとか立ち上がり、自分達のトライの線へと戻って行った。

あぁ。歩いてる。よかった。

私の目には少し涙が滲んでいた。

相手選手が蹴ったボールは綺麗なゴールを決めた。

電光掲示板に0-21が刻まれた。

そのまま前半が終了となってしまった。