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「澪ちゃん、こっちこっちー」


ガヤガヤと騒がしい食堂で、背の低いリイちゃんは跳ねるように手を上げて私を空いた席へと誘導している。


「ハヤテちゃん席確保してくれてありがとー」


人混みをかき分けて向かった先には、すでに席に座ってぶっきらぼうに足を組んでいる入江くんの姿があった。

入江くんは縦肘をつきながらリイちゃんに噛み付いた。


「リイ、そうやっていちいち可愛こぶった言い方すんな」

「可愛こぶってなんかないよーん。あたしは元々こういう話し方なんだもん」


明らかに入江くんをからかっている。語尾がいつもより甘ったるい。けど、私はリイちゃんのそんな言い方が可愛いと思えるから好きだけど。

むしろリイちゃん以外が言えば不快なのかもしれないけれど、リイちゃんだから許される特権だと思うし。


「あっ、分かった。ハヤテちゃんが不機嫌なのは、リイが席取りお願いしちゃったからでしょー? ハヤテちゃん人混み多いところあんまり好きじゃないもんねー?」

「うっせ」


そうなんだ? 入江くん部活してるから人混みとか平気なんだと思ってた。

サッカー部って部活の中で一番人数多くなかったっけ? でも部活の時と普段の人混みとではまた違うのか。