「でも、たこせんか。篠田のせいで食べてみたくなった」

「えっ、私はお腹いっぱいなのに、入江くんはまだ食べれるの?」


さすがは男の子。胃袋のサイズが違うんだな、なんて感心していたのに。


「人を大食漢(たいしょくかん)みたいにいうなよな。別に今すぐ食べたいって言ってるんじゃねーよ」


入江くんはペシッと私のおでこを叩いた。でも叩いたというよりも、さっき頭突きをされた同じ場所を撫でられた感覚だった。それくらい優しいものだった。


「じゃあ今度、どこかで売ってないか調べておくね。大阪以外でも食べれるのかわかんないけど……」

「無いなら作ってよ」


入江くんは微笑みながら、私の顔を覗き込んでくる。でもこの微笑みはさっきまでの優しい微笑みなんかじゃなく、どちらかといえば子供がお気に入りのおもちゃで遊ぼうとしてる時のような、そんな感じがする。


「作ったとしても、冷えたら美味しく無いよ? それにえびせんだってたこ焼きのソースを吸いすぎてだるんだるんになるし」

「んー、じゃあ今度たこ焼きを持ち帰りで買って、えびせんは自分達で用意してたこせん作るのはアリじゃね?」

「まぁ、そうだね」

「よし、んじゃ今度それで作ってよ」


それなら簡単にできる。あとは場所さえあればどこでもいいし。


「そういえば食堂でたこ焼き売ってたよね? あれで試そうか?」


それなら学校で作れて、場所の心配もないし。


「だな」


入江くんは意外と楽しそうに口笛を吹きながら、歩き出した。何かお礼ができたらいいなとは思ってたけど、これは良いお礼になるかもしれない。