「篠田さんって、とことん変わってんな」


そう言って、思い出したようにまた笑った。


「私って、そんなに変わってる？」


自分では普通だと思うんだけど。

確かに恋愛に関しては普通じゃないかもしれない。でも、そうなると普通ってなに？


「ああ、変わってる。まぁ、リイの好みとは合わないんだろうなってのはわかったけどよ、そもそも篠田さんの初恋っていつ？」

「初恋かぁ……いつだろね？」


むしろあったかな？　ってかどれがどうなったら初恋なの？

そんな風に真剣に考えあぐねいている間に、入江くんは吹き出した。


「ぶはっ！　マジか！」


入江くんが腹を抱えて笑ってる様子に、なんか分かんないけど苛立ちを覚える。怒っていいところなのかな？

なんて思っていたら、不快感を感じたのは私だけじゃなかったみたい。


「いって！」

「ハヤテちゃん笑いすぎだから！」


リイちゃんが鬼の形相で入江くんのスネを蹴った。

鬼の形相とはいえ、リイちゃんはリイちゃんだ。怒った顔もリカちゃん人形を思わせる愛くるしさだけど。


「ハヤテちゃん、ちゃんと手伝う気あるの？」

「ねぇよ」

「なんで！　約束と違うじゃない」


……約束？

そんな疑問を思った瞬間、入江くんが話を続けた。


「けど、なんか篠田さんおもしれーから付き合ってみるか。とりあえず、どういうのがタイプなんだ？」

「タイプ？」

「そっ、どういうヤツをかっこいいと思うのか」

「それ昨日リイちゃんにも聞かれたけど……」


そして私の感覚はズレてるって話になった。


「誰がタイプなんだよ」

「○ジョージさん」

「ははっ！　間違いねー！　確かにカッコいいわ！」


肯定してくれてるのになんだろ、バカにされてる感がすごい。