「澪ちゃんの初胸キュンだね。どんな気持ち?」

「どんなって?」

「胸キュンした時だよぅ! 初めての胸キュンでしょ? 念願だったものが叶った瞬間ってどんな感じだったのー?」

「うーん、なんか恥ずかしかったかな」

「じゃあ胸キュンした時はどういう感覚だった?」

「胸のこの辺りがくすぐったくて、気持ち悪くて……それでいてちょっと締め付けられるような感覚で苦しかった」


あの時の感覚を思い出しながらそう言うと、リイちゃんは再び私に抱きついた。


「おめでとー! それは間違いなく胸キュンですー!」


子供みたいに喜んでくれるリイちゃんを見て、私の方まで嬉しい気持ちになる。

リイちゃんは本当に可愛い。


「……で、どうして突然、胸キュンしたの? 何があったの?」


私はうーんと教室の古びた天井に目を向けた後、黒いシミを見つけて、それを見ながらこう言った。


「入江くんに抱きしめられながら、名前を呼ばれた時に、なぜか突然来たの」


そう言うとリイちゃんのビー玉のような瞳は、数多のきらめきを宿した。