手が離れて指先同士が軽く触れた。

手持ち無沙汰になった手が宙に放り出される形になる。


瞬きをすると、いつもみたいに穏やかに笑う薫くんが戻ってきていた。



「ごめん、今のは忘れて。……さ、遅くならないうちに帰ろうか?」



離れた手と、少なくなった口数。

聞かなくたってわかる。


私は彼を傷付けた。