「大丈夫です。……くしゅっ、ぅ」 都会とはいえ、暦上の季節は初冬。 夜となれば気温はぐっと下がって、秋物の薄手のコートだけでは当然肌寒い。 「中で待ってても良かったのに」 「……目立つかなと、思って」 私がそう答えるとスマートフォンを持つ手とは逆の手を取られて大きな手で包み込まれた。 「あったかいですね、薫くんの手」 「走ってきたからかな」 そう言いながら薫くんは深く息を吸って、優しく笑った。 いつも綺麗に整った前髪は少しだけ乱れている。