「一緒に入るとさすがに不審がられるから、お前が先に行ってろ」


「え」



まさか一人で行くよう言われるとは思わなくて、思わず声を漏らす。


思わず顔を上げると、ミラー越しに逢坂くんが私を見ていた。



「砂川の部屋は最上階……エレベーターから降りて右の一番奥だ」


「あの、でも……」


「玄関入ってすぐエレベーターだからほとんど誰かと鉢合わせしねえよ。堂々としてりゃバレないから普通に入っていけ」



私の不安を読み取ったのか、逢坂くんは子どもをあやすような、普段よりも柔らかい声音でそう言った。