「あ、ごめんね」 男の人はパッと私から手を離して、自分の落ちかけていたパーカーの帽子を目深に被り直した。 「困っているみたいだったから。緊急事態とはいえいきなり触ったりしてごめん」 「えっ、あ、いえ!全然!助かりました!ありがとうございます!」 地面に髪の毛がつくくらい深々と頭を下げると、頭上から小さく吹き出す声が聞こえたのがわかった。 ――わ、笑ってる? 顔を上げると男の人は思った通りに笑っていて。