「体調はどう?」

「うん、良好だよ。」

「ついに明日か、怖いか?」

「ううん、平気。」

「やっと、やっとだな。」




寒かった冬を越えて、季節は春になった。
紗良と過ごす、3度目の春だ。

春のにおいは感じられても、桜の美しさは共有できない。
そんな彼女と初めて一緒に桜を見られる春がやってきた。


俺の彼女は、生まれつき目が見えない。
紗良はずっと真っ暗な世界を生きていた。

そんな彼女真っ暗な世界は、明日終わる。
明日の手術が終われば、あいつは光を感じられるようになる。
生まれて初めて光を感じることができる。
俺は本当に嬉しかった。


俺たちはこれから幸せになるはずだった。
幸せになれるはずだったんだ。