んんっ・・・



目を開けると落書きだらけの壁が目に入った 。


ここ ・・・ どこだっけ・・・?






あ 、そっか ・・・

アイツに連れられてここに来たんだっけ 。



「 目覚めたか 。」



・・・・・・。


「 急に意識飛んでんじゃねぇーよ 。」



「っ!あたしだって意識飛ばそうと思って倒れたんじゃないわよっ!」



やっぱりコイツ嫌いだっ。




「 それもそうだな ( 笑 ) ・・・あんさ 、さっきお前ん家に今日はうちで預かるって言いに行ったんだよ 。ちゃんと言っとかないと家の人心配すんだろ?」



は・・・?




「 余計なことしな ・・・」


「 兄貴 。」






え ・・・ 。







「 お前の兄貴に今すぐ由良を連れてこい!って言われたんだけど ・・・ お前はどうしたい?」




晃季くん 、帰ってるんだ ・・・



・・・・・・・・・ 。




「 アイツ本当にお前の兄貴なのか?俺にはそうは見えなかったけど 。」





「 ・・・お兄ちゃん ・・・ 代わりをしてくれてるの ・・・ 。」







・・・少し前までは


本当のお兄ちゃんみたいだった 。





「 ・・・ そうか 。だったら何で兄貴って言った時からそんなに震えてんだ?」




っ・・・あたし・・・無意識に震えてたんだ ・・・。






「 震えてなんかな ・・・」


「 いい加減隠すの辞めろよ!!確かに俺のこと信じらんねぇーかもしんねぇ。でもな 、お前のこと守りてぇーんだよ!!たすけてぇーんだよっ!!」




・・・っ 。




・・・ここまであたしのこと助けたいって


・・・あたしのこと守りたいって


思ってくれてるんだ ・・・




・・・話せば少しは楽になるのかな・・・?




解放されるの・・・?




「 なぁ 、頼むから本当のこと話してくれよ 。何があったんだよ ・・・ 」



力なくそう言うと



あたしを抱き締めて


「 俺のこと信じてくれねぇーか ・・・?」




っ。・・・・・・




この人なら



この人だったら ・・・




何の根拠もないけど



あたしはそう思った 。




「 ・・・あたし親に捨てられたの ・・・・・・お父さんはあたしが小学校上がる前に家を出てった 。・・・それから ・・・ お母さんは寂しかったんだろうね 、他に男をつくってあたしに邪魔だって毎日手をあげてた 。中学になってお母さんは帰って来なくなって・・・そのときにあの家のおばちゃんに声をかけてもらったの 。」



「 ・・・ 。」



「 ・・・そこに居たのが晃季くん 。これからは頼れって、俺のこと兄貴だと思ってくれていいから ・・・って言ってくれて相談にも親身になってのってくれた 。・・・辛いときだって傍に居てくれた 。・・・・・・でもっ・・・でもね ・・・・・・」



やっぱり話すだけで


・・・ あの日のことを鮮明に思い出して


震えてしまう 。




夢翔はあたしが震えているのに気付いたのか 、



そっと手を握ってくれた 。



「 ・・・ 手 、握っても平気か ・・・?」




「 うん ・・・ 大丈夫 。」




あたし達は手を握ったまま話を続けた 。




「 ・・・ でもね 、高校の入学式の日中学の時からあたしのこといじめてた奴があの学校に居ることを知って
晃季くんに相談しようと思って声をかけたの 。・・・っ。そしたら・・・いつもの晃季 ・・・くんじゃなくてっ。」



「 ゆっくりでいい 。・・・ ゆっくりでいいから ・・・」




「 っ。うん ・・・ 」




夢翔はあたしの目をしっかり見て聞いてくれている 。






「 っ。ずっと好きだったって 。だから由良を俺のものにするって言われてっ・・・ あたしは・・・っ。でもっ誰かに話したらっ・・・バラすって ・・・ っ。」



「 もういい 。分かったから 。もう何も話さなくていいから 。」




あたしは夢翔に抱きついて



子どものように泣いた 。





夢翔はそんなあたしを払いのけようとはせず



泣き止むまで優しく包みこんでくれていた 。






「 由良 、よく耐えたな 。辛かったよな 。・・・ もう大丈夫だから 。」



「 ・・・っ。」




「 ちょっとまってろ 。」


夢翔はそう言うと隣の部屋で誰かと話して

戻ってきたと思ったら


「 ・・・由良ちゃん 、もう大丈夫だよ 。」


さっきの部屋に居た曖斗?くんだった 。



「 由良 、わりぃ。ちょっとコイツと待ってて 。・・・すぐ戻るから 。」


あたしの頭をぽんぽんってして


夢翔は単車に乗ってどこかに行ってしまった 。





・・・・・・




「 ごめんね 、由良ちゃん 。夢翔からある程度話は聞いたよ 。・・・1人で抱え込んできつかったよね ・・・」





そっか 、この人も聞いちゃったんだ ・・・





「 ・・・曖斗くん?・・・ あたし1人でも大丈夫だから 、お友達のとこに ・・・ 」


「 1人にさせるわけないでしょ?こういう時こそ傍に居てあげなきゃ 。何かあったら全力で守る 。それが仲間でしょ?」





・・・仲間・・・?





「 ・・・?・・・」




「 あれ ・・・?由良ちゃん何も聞いてないの?」



「 な、何をですか?」



「 アイツ、夢翔は由良ちゃんを凰龍の姫にするつもりだよ 。」




・・・姫・・・?




「 姫ってゆーのは、仲間でもあり 、皆から守られる存在なんだよ 。」




「 ・・・何で ・・・あたしが ・・・?」



何であたしなんかを


守るって言ってくれるの ・・・?


何であたしなんかを


仲間って言ってくれるの ・・・?





「 それは夢翔本人に聞いてごらん 。」




それから1時間ぐらい曖斗くんと話をした 。



「 そろそろ夢翔が戻ってくるかな 。」



その言葉と同時に



「 戻ったぞ 。」




そこには拳から血を流す夢翔が立っていた 。




「 ・・・ ねぇ 、血が ・・・」



「 ・・・ あぁ、わりぃ。」


夢翔はそう言うと下に降りてった 。





「 由良ちゃん 、夢翔が何してきたか今から聞くと思うけど ・・・ アイツすっげぇー不器用って事だけ覚えといてあげて 。」





・・・?


不器用?



夢翔は何をしてきたんだろう ・・・?