私は、こく、と頷いた。


そう、私たちがちょうど向かおうとしてきた方向から歩いてきたのはみっくんだった。

正確に言うと、みっくんの彼女の1人である女の子も一緒に、なんだけど。




離れていても可愛いってわかるほど、お人形さんのように整った顔。


……たしか、美結(ミユ)ちゃん、だったかな……?
みっくんと同じクラスだったということだけは覚えている。

みっくんのクラスに行くたびに、見かけていたから。




「ひまり、話しかけないの?いつもみたいに」

夏奈ちゃんが、ぼうっとしていた私に囁く。


「えっ?」

「えっ?って……棚橋くんに話しかけにいかないの?」


みっくんに?
でも……

「みっくん、今は美結ちゃんと一緒だから……」

「え?今さらそんなこと気にしなくてもいいんじゃないの?今まで散々話しかけてきたんでしょ?」


たしかに、みっくんにはずっと一方的に話しかけてきたけれど。

でも、そのときは ─────



そこまで考えて、はっ、と気がついた。
………そうだ、私、もしかして初めてなんだ。


みっくんが、休日に彼女さんとデートをしているところを見るのは。



登下校を一緒にしているのは、何度も目にしてきたけれど………。


そうこうしている間にも、みっくんたちはどんどんこちらに近づいてきていて。