ドキドキは加速して、最高潮になったとき。




「……久しぶり」


「っ、みっくん!!」




教室の前の扉からみっくんが入ってきた。




みっくんはそのまま、つかつかと私の座っているところまで近づいてきて。




「なんか……先生に頼まれて、今日は俺がみることになったから」


「うん、ありがとう」




先生とみっくんの会話、全部聞こえてたもん。
引き受けてくれるなんて、本当にみっくんは優しいというか、お人好しというか……。



そしてみっくんは私の前の席のイスをくるりと後ろに向けたかと思えば、そのイスにすとん、と腰を下ろした。





その瞬間ふわり、と香ったみっくんの香りと、近づいた距離にドギマギする。




……みっくんと同じクラスだったら、こんな感じなのかな。




こんなの、心臓が保たないよ。





みっくんは私の机の上のプリントの山を一瞥して、目を細めて。



「補習なんて珍しいじゃん」



ぽつり、と一言。



あまりにも素っ気なすぎて、自分に投げられた言葉だと気づくのに、少し時間がかかってしまった。





「あ、うん………。入学してから初めてなんだよね、実は」



まさか、みっくんのことばっかり考えていて勉強が手につきませんでした────とは言えるはずもなく。




そして、せっかく答えたのに、みっくんは、ふぅん、と一言で片付けてしまった。



残念に思ったのは少しの間だけで、みっくんが次に発した言葉で気持ちを引き締めた。




「じゃあ、始めっか。とりあえず、プリント解いて………わからないとこは聞いてくれればいいから」




そう言うと、みっくんは自分の鞄からなにやら参考書らしきものを取り出して、解き始めた。



早くも自分の世界、という感じで。