聞き間違いかと一瞬思って、
それから聞き間違えるはずもなかったことを思い出す。
「あれ、棚橋って花岡と知り合いだっけ?」
「知り合いもなにも………」
言い淀む声は、たしかにみっくんのもの。
先生が呼び止めたのは、みっくんだった。
その事実だけで、緊張とか不安とかどうでもよくなって。
代わりに訪れたのは甘い期待。
「んで、どう?英語なんだけど、教えてやってくれない?」
先生が問いかける。
どうかな、みっくん、先生の頼みを受けてくれるのかな。
そしたら、この教室に私とみっくんの2人きりになるわけで……なんて先走る期待と。
相反するように、でもみっくん私のこと嫌いだもんね……と冷静に分析したり。
なんだかんだ言ってみっくんは優しいから、頼みを受けてくれたりしないかな、とか。
みっくんがそこにいるだけで、
私の心は大忙しだ。
先生と共にみっくんの返事をドキドキしながら待っていると、扉ごしにみっくんの声が聞こえた。



