きっと、それは、
同じクラスである浅野に向けられた声で。
きっと、応えるべきなのは、
先を走る浅野の方で。
だけど、奮い立たされたのは──────
『負けらんねー……っ!』
俺の方だ。
あんなに限界を感じていたのに、
自分でも驚くほど力が出て。
…………知らない。
ひまりが何を言おうが、しようが、俺は知らない。
だけど。
『くそっ、』
浅野が小さく呟く。
だけど、気に食わないけど、
俺がひまりに振り回されてるのだって
本当は否定しようもない。
──────ゴールテープを先に切ったのは、俺だった。
『あーあ、負けちゃった。“ただの幼なじみ” くんのクセに本気なんか出しやがって』
浅野は、含んだように笑いながら、疲れたように伸びをして言う。
『……鬱陶しい』
浅野も、
ひまりも。
好きにやってればいいのに、
俺まで巻き込んで、かき乱して。
言いようもない気持ちが湧いてきて、それを握りつぶすように靴紐を結び直した。



