自分の中に湧き上がってくる矛盾だらけの感情を、自覚して。
『……っ』
足に力を入れ直して、浅野の背中を追った。
負けたくない。
じわりと滲み出る思いのままに足を動かす。
浅野に追いついて、
それから少しだけ浅野の前に出た。
僅かに抜いたのも、ほんの一瞬で、
浅野もすぐに抜き返してくる。
ゴールまで、もう10メートル程しかない。
俺を抜いた浅野は、スピードをまた上げて引き離すように先を急いだ。
……っ、速い。
足に力を入れようにも、もう既にかなり全力疾走してきたせいで、スピードを上げるほどの余裕も残っていなくて。
ゴールは、もう目の前。
このままなら、浅野が先にゴールテープを切るのは確実だ。
………もう、それでもいいか
なんて、投げやりになったそのときだった。
声援も歓声もシャットアウトしていたはずの俺の耳に、真っ直ぐに。
『─────っ、頑張ってっ!!』
飛び込んできたのは、
アイツ───────ひまりの声。



