周りの声援も、歓声も、耳には入ってこない。
ただ、ただ、走り続けるだけ。
『……っ!』
ゴールまであと20メートル、といったところ。
ようやく、浅野のすぐ後ろに位置づけられた。
ここからが勝負だ、と思ったとき────
『くそっ、』
俺が距離を詰めたことに気づいた浅野が、ぐっと一段スピードをあげた。
その瞬間、ふと頭をよぎったのは浅野の真剣なトーンの声で。
『じゃあいいよね。俺が、ひまりちゃんを狙って、告白して、付き合うことになっても』
『リレー。光希が勝ったら、今まで通りスローペースで行く。けど俺が勝ったら、お構い無しに、あの手この手を使ってひまりちゃんを堕としに行くから。いいよね?』
浅野が、こんなに必死に走る理由がもしそうなら─────、いや、絶対それに決まってるけれど────、
俺は、
『っ、気に食わねー、』
わからない。
俺にとっては心底どうでもいい話のはずなのに、でももしそうなれば……って想像すると気に食わない。
浅野がいくらいい奴だってわかっていても、
どうしてか、
アイツが浅野の隣にいるのは気に食わないと思う。



