こういう行事ごとって、当日に予測不可能な事態が起こることがよくある。
ただ、それは不運だった………、としか言いようがない。
応援席から、クラスからは絶望、その他からは同情をまとった声がなだれこんでくる。
追い討ちをかけるように、8組のバトンはアンカーに渡って、浅野が弾かれるように走り出した。
俺の元にも、バトンが近づいてくる。
そいつの顔は、申し訳なさに溢れていて。
バトンを受け取るために少し助走をつけながら思う。
─────せっかくの体育祭なんだから、笑顔で終わるのが一番いい。
だから、
『そんな顔すんな、』
呟いて、同時にバトンが受け渡されて。
久しぶりに無我夢中で走った。
走る………というよりは、足を動かす、という感覚で。
アンカーを務めている以上、できるだけのことをしようと思う。
喰らいつくように地面を足で蹴って、前へ前へ。
少しずつだけど、浅野の背中が近づいてきた。



