浅野も気づいたようで、柔らかい笑顔を浮かべながら手を振っている。
そんな浅野に、アイツは照れたようにはにかみながら小さく手を振って。
浅野は満足気に自分のレーンに戻った。
『やべ、めっちゃ頑張れそうなんだけど』
誰に聞かせるわけでもない浅野の独り言が、俺の耳に届いた。
俺は、はぁ、とため息を零して。
─────集中できねー……。
無性に悶々とする気持ちを押し込めながら、目の前のことに集中した。
*
パンッ
弾けるようなピストルの音。
その音を合図に、第一走者が走り出す。
こちらから見ている限りでは、8組が速い。
陸上部っぽい走り方だな……なんて冷静に分析してしまうのは、自分も元運動部の名残だろう。
当の4組は、2組を挟んで三番手。
でも、敢えて第二走者に速いヤツを持ってきているから、いくらでも形勢逆転が可能なはずだ。
俺の読みは正しくて、第二走者に渡った瞬間、4組がまたたくまに2組を抜いた。
そのまま、先頭を走る8組にもじりじりと詰め寄っていく。



