私ね、

もし “恋” に味をつけたなら、
それは絶対的に 甘い って思ってた。



私の大好きなお菓子たちと同じで、

甘くてふわふわでとびきり幸せなんだって。




だけど、今私が抱えている、この気持ちは全然違う。









いつまでも、しゃくり上げる私にしびれを切らせて、夏奈ちゃんが久しぶりに口を開いた。



「いつまで泣いてるの?失恋したわけじゃないんだから元気出しなよ!ほら涙拭いて。……って、ああっ、かき氷溶けちゃってるし!」



ハンカチを私に貸してくれた夏奈ちゃんは、私の持つカップの中のかき氷を見て、驚いた。


それもそうだよ。



真夏にかき氷を放置していたら、こうなっちゃうよね。


まるでジュースのようになってしまったかき氷(の成れの果て)を見て苦笑する。






「そうだ、これ、渡すの忘れてた」


そう言って夏奈ちゃんが私に手渡したのは、




「わたあめ……」




夏奈ちゃんが買いに行ってくれていた、ふわふわのわたあめ。




「そ。涙拭いて、それ食べなよ」



「ありがと…っ」





ゴシゴシ、とハンカチで目を擦って。



クライマックスに近づく花火を、遠くに眺めながら、わたあめをちぎって口の中に含んだ。





「夏奈ちゃん、だいすきっ」



「言う相手まちがってるよね」



「う……っ、夏奈ちゃんのばか!!」














涙で塩味のわたあめは、





甘いというより、


しょっぱいというより、


なんだかすごく、[にがかった] 。