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「面白かったですね!!」

「そーですね」

「あの主人公の女の人が…」

朱子さんは映画の感想を言ってる。

でも僕の頭の中は

それを聞くほど余裕がない。

「って龍聖さん聞いてます?」

「あ、ごめんなさい。」

「やっぱり今日変ですよ?」

「変…ですか?」

「心ここに在らずって感じで
私じゃない誰かといるみたいです。」

そう言った朱子さんは

僕の目の前に来た。

「ほら、気づいてますか?
今日初めて目が合いました。
気づいていなかったでしょ?」

「…ごめんなさい」