あずさがなぜ車種を知っているのかはこの際聞かないでおこう。

しかし、ポルシェ。

名前だけなら聞いたことはあるが、ポルシェ。

「キーでございます。」

翔から受け取ったそれは、ただならぬ重厚感が漂っていた。

ただの車のキーにもかかわらず、だ。

「行くか。」

古川さんは、私たちがこれから買うであろう物の荷物持ちをしてくださるということで助手席に座り、私とあずさは後部座席に乗る形となって出発した。

***

パナメーラなる車はオープンカーである。

それが何を意味するのか。

視線だ。

水浦邸を出て、道路に出るとすぐに周囲の人から二度見されるほどであった。

しかし私のことである。

前回翔のロールスロイスに乗せてもらった時と同じように、私のちゃっかりとした部分がまた出てきてしまったのだ。