8:15
やばい!!遅刻する!
学校まで30分かかるのに・・・
急いで家を飛び出してマンションの階段を駆け下りる。
あっ!ドンッ!キャッ!!
「おっと、大丈夫??」
階段から落ちたと思ったら大きな手に支えられていた。
「ご、ごめんなさい!!」
「俺は大丈夫だけど、君は??」
「へーきです!!急いでるのでこれで!ほんとにごめんなさい!」
隣に住んでる大学生の人だ。めちゃめちゃかっこよかったな。
急がなきゃ!ズキッ
「!!ちょっ!怪我してんじゃん!病院行った方がいいよ。送る。」
「いや、お構いなく。」
「何言ってんの、いいから乗って。」
半ば強引に渡されたヘルメットをかぶってバイクにまたがる。
「ちゃんとつかまれ。」
そう言って私の手をつかんで自分の腰に回す。
すごいスピード・・・。急いでくれてるのかな。
病院につくと、
「こっからはひとりで行ける?」
コクッ
「じゃな。ドジっ子」
ニッといたずらっぽく笑って私の頭をポンポンと軽くたたいて平然と走り去っていった。
「あーら。これは捻挫だね。」
「あのう。そんなにひどいんですか?」
「あー。大したことはないんだけど、次やっちゃうと結構重症になるかもね。まぁ、今回は松葉づえとかは必要なさそうだから、痛み止めと・・・」
はぁ。私って究極にダサい・・・。
そう思いながら病院を出る。そこで見た光景に私はびっくりした。
「大丈夫か??」
え?なんで??大学行ったんじゃないの??
「あのねぇ、女の子が怪我してんのに平気な顔してどっか行くほど人間、腐ってないわけよ。これ買いに行ってた。」
そう言って私に渡したのはコンビニの袋。中にはパンやらおにぎりやらたくさん入ってた。お菓子まで入ってる。
「あの慌てっぷりだと朝食べてないでしょ??」
「はい・・・食べてないです。でも、こんなに食べれないです。」
「はは!!当たり前だよ。俺も食べるの。」
へ??
「あ、今何時か知ってる??もう、12時まわってるよ??」
えええ!?そんなに時間たったの!?
あ、思い出した。前のおばあさんが話し込んでたんだ。待合室で寝てて早く感じたけど、1時間くらいたってたのかも。
「コンビに行くのってそんなに時間かかります??」
ふと頭の中をよぎった疑問。その間この人何してたんだろう。
「待ってたよ??1時間くらいかな。こっから大学まで往復してもよかったんだけど、その間に出てこられたら困るし。絶対渡したかったから。」
やばい。私、かなりドキドキしてる。
「俺、アップルパイね。」
あ、私それ狙ってたのに!!
「どうしたの??」
「何でもないです・・・」
買ってきてもらったのにそんな文句はいけない。・・・でも、めっちゃおいしそう。
「いる??」
へ??
「ずっと見てるから。食べたいのかと思って。違った??」
かぁ。自分のほっぺたの熱をこれでもかと感じた。
「いいよ。あげる。食べな。」
「え、でも・・・」
「いいって。食レポが上手なら許してあげる。」
何その妙なプレッシャー。そう思いながらもらった大きなアップルパイをほおばる。
「おいひぃ~!!・・・」
「・・・それだけ??へたくそ。」
はぁ!?じゃぁ、やってみてくださいよというと、いいよと言って私の手の中にあるアップルパイを一口食べた。
!!!???
か、間接キス!?てっきり自分のおにぎりでやるのかと思ってた。
「うわ。うま。」
「・・・それだけですか??」
「う、うるせぇよ。もっと食うぞ。」
「わぁ!!だめです!!これは私のです!!」
「・・・笑った。」
へ??
「笑えんじゃん。いつもそういう顔してたらかわいいのに。」
訳が分からず、ぽかんとしていると、
「今日の朝からずっとしかめっ面だったから。笑えないのかと思った。」
「なんで、そんなこと気にするんですか。今日、会ったばっかなのに。」
「いや、これでも一応お隣さんだからね?」
なんだ。そうゆうことか。今まで優しくしてくれたのも隣の家の私が怪我したからだけでしかなくて、特別なんかじゃないんだ。
「あ、でもね、隣に住んでるのが君でよかったな。」
え??
「だってさ、今、楽しいもん。俺。」
…///
「私もです。」
「ほんと!?じゃぁ、期待していい?俺のこと好きになってくれること。」
…なんなんだろう。この人。優しかったり意地悪だったり。
「嫌です。」
「…そ…っか…」
「私ばっかり好きになるのは嫌です。」
「へ?…笑笑そーゆーこと?びっくりした。俺のこと嫌いなのかと思った…俺は、もう、好きだから。」
え?
「好きなの!わかった?」
「は、はい…」
よし。そう言ってお隣さんは私の頭を優しく撫でた。
ずるい…
「あ、名前、教えてよ。付き合うのに名前いらないのはまずいでしょ?」
つ、付き合う!?
「え?違うの?俺のこと、好きじゃない??」
朝と同じいたずらな笑顔。かっこいい。本当にずるい。
「違いません…」
「じゃぁ、決まりだ。俺、多田陽介(ただようすけ)って言います。よろしくね。」
「真木果歩(さなきかほ)です。よろしくお願いします…」
こうして私たちは恋人同士になり、私は意地悪されたり、優しくされたり、幸せになった。

〜END〜