「今日で30歳か。」

誰もいないオフィスで一人つぶやく。

前までは結構もてる方だったのに。

そんなことを思いながら残りの仕事を一気に終わらせようとする。

・・・「ハッピバースデイ トゥ ユー・・・」

・・・????

さみしすぎて幻聴とか?

「先輩!!おめでとうございます!!」

後ろから元気な明るい声が聞こえて、振り返ってみると、

「金城君!!なんで!?」

「なんで今日誕生日って言わないんですか!?知ってたらこんなしょぼくなかったのに・・・。」

金城君の手元には一人分のショートケーキにろうそくが輝いていた。

なんで??私の頭の中は「?」でいっぱいだった。

「なんで知ってるの??」

「袴田(はかまだ)さんから聞いたんですよ。今日先輩が誕生日なのに仕事だからって。」

袴田さん!!何余計なことしてくれちゃってるんですか!?

「あ、ありがとう。でも、金城君にやってもらっちゃって悪かったよね。早く帰りたいでしょ??」

「あ、いえ。実は、袴田さんサプライズで何かやってあげてって。みんなに伝えといてって言われたんですけど。やっぱ俺が一番に祝ってあげたいし、みんなは明日伝えればいいかなって・・・。」

・・・そんなこと言われたの初めてでうれしすぎて何も言えない。

「うざいかったですよね俺・・・。恋人でもないのに祝うなら一番初めがいいって。」

「・・・いや、あの、私も、一番最初に祝ってもらうのが金城君でよかった。」

あぁ。幸せすぎるよ。こんなに後輩に大事にされて。

「・・・じゃぁ、俺も、30代一番初めの彼氏にしてくれませんか??」

えええええ!!??こんな美形男子。前の私なら食いついてたけど・・・。

「いやですか?俺と一緒。」

そんなかわいい目で見ないで!!そう思いながら金城君に背を向ける。

フワッ

柔軟剤の香りがすると思ったら後ろから抱きしめられてた。

「えっ!?」

「先輩がかわいいからいけないんです。ほっとけないんですよ。栞奈(かんな)・・・さん。」

「いやじゃない・・・よ??」

「へ??」

「だから、金城君とお付き合いするの。・・・嫌じゃないよ?」

金城君は返事の代わりに私を強く抱きしめた。

「やっといえた。ずっといつ言おうって思ってたんです。」

「早く言ってよ。もっと早く言ってくれてたら思い出いっぱいの30歳だったのに。」

「かわいすぎます・・・栞奈(かんな)・・・さん。」

君となら、遅咲きの恋でも大切な思い出たくさん作っていきたい。

END